四月に放送が始まったアニメ「かくしごと」は、漫画家である父親が、娘に自分の仕事を隠し続けるお話しです。
ほのぼのとした父娘の日常の中に、ギャグがたくさん盛り込まれていたかと思えば、シリアスなシーンもあり、ほっこりしたり、爆笑したり、「なになに?どういうこと?!」と今後展開が気になったり。
驚いたのはエンディングソングでした。
もう、40年前のヒット曲、大滝詠一の「君は天然色」が使われていたからです。
なぜエンディングに「君は天然色」が使われたのか考察してみて、可久士と姫の過去に理由があるのではと考えてみました。
原作者の久米田康治が、大滝詠一やイラストレーターの永井博の影響を受けていたこともわかりました。
かくしごとはこんなストーリー
漫画家であることをひたすら姫に隠す可久士
漫画家である後藤可久士の一人娘である「姫」への「かくしごと」は「描く仕事」をしていることでした。
実は、可久士は「きんたましまし」というタイトルの、下ネタでヒットした漫画を書いていました。
娘の姫にこのことを知られてしまったら、父としての信頼を失うことを恐れて、必死になって漫画家であることを隠すのでした。
朝はスーツ姿で出勤していき、仕事場の近くの「マリオネットランチマーケット」というお店でママorマスター?に
「電話ボックスで着替えなさいよ、クラークケント」
と言われながら、Tシャツ、短パンに着替えて仕事に臨むという涙ぐましい努力を毎日しているのです。
✒第1話放送、TOKYO MXでもスタート!
漫画家であると姫にバレないようにしている可久士。その工夫とは…?
【第1話本日放送】
「かくしごと」
「ねがいごと」
TOKYO MX:24:00〜
サンテレビ:24:30〜#かくしごと pic.twitter.com/d6Tt9yfjk6— 『かくしごと』TVアニメ公式 (@kakushigoto_pr) April 2, 2020
姫に見つかりそうになり、必死で誤魔化し続けるドタバタ劇や、お互いを想う父娘のほっこりとした場面が印象的なのですが、漫画家あるあるの裏話や、業界暴露話も面白かったりします。
可久士は漫画を書く時は、Tシャツ、短パンがお決まりのスタイルですが、以前は全裸でないと書けなったという設定は、原作者久米田康治の実話でもあります。
第一話が18歳になった姫の
「ここに私の知らないあの人がいる。18歳の誕生日、私はその箱の鍵を手に入れた。かくしごとはなんですか?」
というセリフで始まるように、11歳の姫との笑いたっぷりのほのぼのストーリーの中に、姫と可久士の意味深な未来の場面や、姿の見えない母親の秘密が見え隠れするシーンが気になるのです。
1話からずっとちりばめられていた謎、可久士が隠していた鎌倉の家に姫が向かうシーンや、登場することのない母親についてのこと、漫画を描かなくなった可久士のことなど11話まで張り巡らされた伏線が、12話で一気に回収へと向かいます。
姫は本当に気がついてなかったのか?
12話で一子先生(小学校の時の担任の先生)が
「姫ちゃんはおとうさんの隠し事本当に気づいてなかったの?」
と聞いてきて、姫の答えは
「本当に知らなかったんです」
知らないままずっと優しさに甘えていたということなのです。
しかし、2話の冒頭で18歳になった姫が
本当は父が隠してたのではなく、私が知ろうとしなかった。
たぶん知るのが怖かった。
父の仕事を知ることで、他の知りたくないこともいっぱい知ってしまう。
父との幸せな生活が壊れてしまう気がして。
と言うシーンがあります。
姫は犬が欲しくて木にくくりつけたロープを引っ張って犬を飼う練習をするなど、かわいくボケる子供らしい面があります。
✒第7話放送開始まで、
BS日テレあと30分 / TOKYO MXあと1時間ロープを持った姫。その反対側を、しっかり木にむすんで…?
【第7話本日放送】
「いぬほしき」
「母子を継ぐ者」
TOKYO MX:24:00〜
サンテレビ:24:30〜
BS日テレ:23:30〜
AT-X:23:30〜#かくしごと pic.twitter.com/tQAfCPqVRA— 『かくしごと』TVアニメ公式 (@kakushigoto_pr) May 14, 2020
犬の名前を届ける際も、窓口で「ご登録ですか?」と聞かれて
ご登録=後藤ロク=犬の名前は「ロク」
と勘違いして、飼い犬の名前は「ロク」に決まった勘違いがあったり。
✒️後藤家に新しい家族が増えました!
後藤ロク(CV.花江夏樹)
皆様これからは、可久士と姫に加えてロクもよろしくお願いしますね♪#かくしごと pic.twitter.com/5mcl1UpHfd
— 『かくしごと』TVアニメ公式 (@kakushigoto_pr) May 21, 2020
でも、おとうさん想いのなかなかしっかりとした子なので、おとうさんが何かを隠していることを敏感に気がついているけど、見ないふりをしていたのではと感じたりします。
おとうさんが何かを隠しているような気がするけど、優しいおとうさんのことだから姫をだますのではなく、姫のことを想って隠していることになんとなく気がついていて、必死で見ないようにしていたのでは?と思いました。
姫はもしかしたら自分は「隠し子なのでは?」と心配していたようでもあります。
おとうさんが隠している「何か」を知ってしまうと、二人の生活が楽しくてたいせつな分だけ、壊れてしまうのが怖くて不安で、無意識のうちにに知らないようにしていたのではないかと考えられます。
エンディングソングは懐かしいあの曲!
エンディングソングを聴いてぶっ飛ぶ!!
エンディングソングのイントロを聴いて
「えっ?これまさかあの曲?」
となり、可久士と姫の手拍子に合わせての
「タンタン、タタタ、タタンタタンタン」
で
「やっぱり!だよねー!!」
と驚き、ボーカルが始まって
「えーっ!!マジで本人だー!!」
と飛び上がりました。
もう40年くらい前のヒット曲、大滝詠一の「君は天然色」でした。
想い出はモノクローム
「君は天然色」の曲に合わせて、可久士と姫がそれぞれリズミカルにテンポよく、街並みを歩いていくシーンから始まります。
「別れの気配をポケットに隠していたから・・・」
ここの場面で「かくしごと」の文字のピンクのネオンサインが光る演出がなかなかニクイです。
「君は天然色」のMVでもこの場面でネオンサインが光るので、リンクさせている感じがします。
最近ではこのネオンサインも、だんだんとLEDに変わってきて、昔ながらのガラス管を曲げて作るレトロな物は少なくなってきているようです。
「想い出はモノクローム色をつけてくれ」
の歌詞のように、今まで姫に隠し事をし続けてきて後ろめたい想いをしていた可久士と、おとうさんの秘密に不安を抱いていた姫のモノクロームの過去。
楽しくて幸せな生活を送って来ても、お互いのことを想うがために秘密ができてしまって、見えない壁のために本当の気持ちを言い出せない二人。
でも、やっと本音を言う時がきました。
先生にとって漫画を描くことが一番の幸せだよね、に対しての可久士の答えが
「俺が一番嬉しいのは、姫が元気に大きく育つ事」
それを聞いた18歳の姫は本当の気持ちをおとうさんにぶつけます。
「おとうさんと一緒がいいです」
エンディング曲の終わりの方で、18歳の姫がPOPな背景をバックに走り出し、可久士も坂道を駆け上ってそして二人は出会います。
お互いに本当の気持ちを言葉にした二人のこれからは天然色に輝いていくのでしょう。
突き抜けるような青い空と眩しく光る海
エンディングの背景に登場する、鮮やかな青い空に吸い込まれそうになります。
可久士が隠していた鎌倉の家は海の近くにあり、オープニングや本編に出てくる海は、太陽の光を反射して眩しくきらめいています。
突き抜けるような青い空と、太陽を反射して眩しくきらめく海・・・
すぐに大滝詠一の「A LONG VACAT ION」の永井博の描いたジャケットを思い出しました。
「かくしごと」のコミックの表紙にも、青い空や海が鮮やかに描かれています。
でもよく見ると、影や反射する光のグランデーションがはっきりと描き分けられていて、黒ではない輪郭線がくっきりと描かれているのは、永井博が活躍していた頃に同じく人気があった鈴木英人のイラストに近いような気がします。
かくしごとのエンディングの風景も、街の緑や道路の色、雲や水面の陰影や光がくっきりした線で描かれていて、ほっきりとした線の中に鮮やかな色づけがされています。
同じ頃に「ハートカクテル」で人気だったわたせせいぞうのイラストも、くっきりとしたきれいなグランデーションが描かれているので、わたせせいぞうの海のイラストを思い出したりもしました。
原作者の久米田康治は1967年生まれ、永井博や鈴木英人、わたせせいぞうが活躍していた頃は10代だったのですが、鈴木英人やわたせせいぞうの影響を受けているようです。
「かくしごと」のエンディングの映像に懐かしさを感じたのは、「君は天然色」の曲と共に、80年代に活躍していたイラストレーターの海や空を思い出すからなのかもしれないです。
「A LONG VACATION」とコラボしていた
大滝詠一の「君は天然色」が収録されたアルバム「A LONG VACATION」が発売40周年を迎えて、記念アルバムが発売されましたが、発売記念企画「ロンバケ・コラボポスター企画」で、久米田康治がアルバムのイメージポスターを描いていました。
久米田康治は小学生の頃にサインをもらったことがきっかけで、中学時代は大滝詠一のファンだったようです。
80’s
ヘインズの白いTシャツにコンバースの踵を潰し海に繰り出し大滝詠一を聞けば
お世辞にも綺麗では無い三浦海岸でもその風景は
鈴木英人さん、永井博さんの描く憧れの西海岸のワンシーンに脳内変換出来たものです。
久米田康治のこのコメントから、かくしごとのエンディングは大滝詠一や永井博、鈴木英人の影響を受けていたようですね。
最後に
時には言わなくていいこともあるし、ずっと秘密にしておいた方が幸せな場合だってあります。
でも、どんなにお互いを想い合っていても「かくしごと」があるがために、何か心に引っかかってしまっていた可久士と姫。
本当の気持ちをストレートな言葉にした二人は、なんだか伸び伸びしているように感じます。
「かくしごと」はそんな二人を鮮やかな色彩と、懐かしくてキュンとする音楽で描いてました。
実は、18歳の姫ちゃんにもちょっとした「かくしごと」があるオチにもほっこりさせられたのでした。
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