軽度知的障害の娘が障害者枠で就職して、やりがいを見つけた体験談

就職活動

 

軽度知的障害と広汎性発達障害の娘が、障害者枠で、企業に事務補助の仕事で一般就労しました。

 

障害者枠で企業で働くとなると、簡単で単純な仕事が多くなるようです。

娘は、パターン化されたことを、決まったルールで行うのが得意なので、単純作業を飽きることなく続けることができます。

他の社員がめんどくさがる作業を、娘が快く引き受けて感謝されることで、自分が役に立っていると感じています。

一般企業の中で、軽度の知的障害者が自分の役割を知ることで、やりがいを見つけて働けています。

 

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就職1週間目の仕事

 

就職しての第1日目は、この会社はどんな仕事をする会社で、どんな人たちが働いていて、その中で娘が働くことになる部署はどんな役割をするところなのか、会社や仕事のついての説明がありました。

他にも、仕事をする上で「守秘義務」があることや、一般の人が立ち入ってはいけない場所など、個人情報に関する説明などを受けてから、実際の仕事の内容の説明があったようです。

 

初めの1週間の主な仕事は

  • 書類をシュレッターにかける
  • 書類の押印
  • 環境整備

などの簡単な仕事から始まりました。

 

書類をシュレッターにかけたり、書類の訂正などのためにゴム印を押す仕事は、以前にチャレンジ雇用で働いていた時にも任されていた仕事です。

環境整備については、現在は感染症対策でこまめに消毒が必要になっているので、大切な役割であることを自覚しながら働けたようでした。

 

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データ入力作業を行う

 

就職してから8日目からは、データ入力作業を任されました。

ハロートレーニングで三か月間、パソコン訓練を受けて、ワード、エクセルの資格を取ったことが活かされる仕事になります。

娘の働く会社は、人材派遣を行っているので、いろんな職場にたくさんの職員が配置されていて、その職員の出勤状況を入力していく作業になります。

 

集計された数値を、ひたすらパソコンで入力していく単調な仕事なので、

「集中しすぎると疲れるから、休みながら行って」とか

「飽きてきたら他の仕事に切り替えて」

など、周りから声をかけられるのですが、娘はパターンの決まったことを繰り返すことが得意であり、好きでもあるので、データ入力の仕事が楽しくてたまらないようです。

入力作業が面白いのと同時に、他の職員の手をわずらわす面倒な仕事を引き受けて感謝までされるので、働き甲斐がある作業になっているようなのです。

 

できる事とできない事を伝える

 

娘の入社した会社は、積極的に障害者雇用に取り組んでいますが、実はこれから働く支店では、障害者を雇用するのが初めてになるそうなのです。

 

娘は以前に1年間、チャレンジ雇用で事務補助の仕事をした経験がありますが、働き始めた三か月間は、職員とのやり取りがうまく行かなかったり、どう動いていいのか分からなかったりで、ストレスで体調を崩してしまうことがありました。

そこで、今回も娘の取説として、WAISⅢを受けた時に説明された娘の特徴や、得意な事や苦手な事を書いた用紙を職場の担当者に渡しました。

 

  1. 苦手な事は「複数のことを同時にすること」と「相手がどう思うか想像すること」ですが、集中力があり真面目なので、教えてもらったことをきちんと実行することができます。
  2. 得意な事は「パターン化したことを覚えること」で、苦手なことでも「このときはこうすればいい」というパターンをたくさん覚えることができるので、練習すれば乗り越えることができます。
  3. 「見たことを順序立てて物事を考える」ことも得意なので、いくつかのパターンから、自分なりに考えて適切な反応をとることができます。

 

「複数のことを同時にすること」と「相手がどう思うか想像すること」

 

電話を受けてメモを取りながら、相手の話を理解して状況判断をすることは「複数のことを同時にすること」になるので、電話の応対はできません。

「相手がどう思うか想像すること」は、これまでにB型事業所や就労移行支援、チャレンジ雇用やハロートレーニングを通じて、いろんな立場の人と関わるうちにだいぶ身に付いてきています。

しかし、いままで関わったことがない立場の人や、想像の範囲以外のことになると、どうしたらいいのか分からなかったり、勘違いをしたりするので、徐々に馴染んでいく必要があります。

 

パターン化したことを覚えること

 

決まった数値を決まったパターンで入力していく、データ入力作業は「パターン化したことを覚えること」になるので、まさに得意分野であり、“水を得た魚”のように生き生きと仕事が出来ているようです。

 

見たことを順序立てて物事を考える

 

きっちりと視覚化できていて、先の見通しが見える状態なら「見たことを順序立てて物事を考える」ことができるし、体験したことを組み合わせて行って答えを導き出すこともできます。

 

こうして、できる事とできない事をはっきり伝えることによって、いくら頑張ってもできないような苦手な事を避けることができるし、得意なことを任せられることによって、能率的に働いていくことができているようです。

 

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ジョブコーチに入ってもらう

 

娘が、慣れない職場でどう動いたらいいか分からなかったり、できないことや分からないことを上手く相談できなかったりすることが予想されます。

会社の方でも、初めての障害者雇用で、どういう事に気を付けて対処していけばいいのか、判断が難しい場合もあるかと思われます。

そこで、「ジョブコーチ」による支援をお願いすることにしました。

 

ジョブコーチ(職場適応応援者)とは

障害者が職場に適応するのが難しい場合に、職場に出向いて寄り添いながらアドバイスをしたり、障害特性を生かして働きやすい環境づくりをして、仕事に慣れていくお手伝いをする人です。

 

障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)に相談して、地域障害者職業支援センターから、1週間に一回、ジョブコーチが職場まで来てくれることになりました。

 

仕事で分からないことや、他の職員への接し方など、どうやって聞いていいのか分からなかったり、聞きにくかったりすることを代わりに聞いてくれます。

そこから、どういう風に行動したらいいのかのアドバイスもしてくれます。

逆に、職場の方からの娘への要望も伝えてくれて、それをどうやって対応するのかも一緒に考えてくれます。

 

娘は、長時間座ったままでの作業にあまり慣れていないので、座りっぱなしの作業で、腰が痛くなることがあるようでした。

そこでジョブコーチが、仕事の担当の方に座って行う作業の間に、立ってシュレッターをかけたりする作業を組み合わせるようにアドバイスをしてくれました。

適度に、座ったままで行う作業と、動きのある作業を組み合わせることで、メリハリのある働き方を提案してもらえたようでした。

 

仕事の担当の方から、頑張りすぎて無理をしないように、また遠慮せずに休みたいときは申請するように、ジョブコーチを通して伝えられました。

まだ有給休暇がないので、身体がきついなと思っても、休みをもらったら迷惑がかかるかもしないと思い、自分から言い出せない時もあるようでした。

疲れたと感じたらジョブコーチと相談して、祝日のない月に、忙しくならない日を選んで休暇の申請をしました。

 

コロナウイルスの影響で、歓迎会などの職場での交流の機会が無くなっています。

昼食や休憩を取る時も、距離を開けたり時間をずらしたりするので、職場の人と親しくなるのに時間がかかっているようです。

ジョブコーチが間に入ることによって、問題なく仕事や職場に慣れていくことができました。

私用での休暇の申請が一人でできるようになるころには、ジョブコーチの支援も月に一回になり、徐々に支援なしでもスムーズに働けるようになってきています。

 

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試用期間が終わり本採用になる

 

三か月の試用期間が過ぎて、非正規ではありますが、本採用されることになりました。

試用期間中に気を付けていたことは

 

  • やむを得ない場合以外は、なるべく仕事を休まない。
  • 遅刻はぜったいにしない。
  • 任された仕事は責任を持って引き受ける。
  • 感謝の気持ちを忘れない。
  • どうすれば、みんなの役に立つのか考える。

この5つになります。

 

やむを得ない場合以外は、なるべく仕事を休まない

 

突然の欠勤は、他の人に迷惑をかけることになります。

試用期間中は、なるべく遊びに行く用事は入れずに、休日はしっかりと休んで体調を整えていました。

特に忙しくなる、月々の決算の日や、給料明細の郵送の準備をする日は、夜は早めに寝るようにしていました。

 

遅刻はぜったいにしない

 

娘は、もともと時間に几帳面な性格なので、寝過ごしたりして遅刻するようなことはありません。

雨に日は、道路の渋滞が予想されるので、1本早いバスに乗って出勤していました。

集中豪雨の予報が出ていた日には、2本早いバスに乗ろうとして

「やむを得ない事情での遅刻は大丈夫だよ」

と言われたりしていました。

 

任された仕事は責任を持って引き受ける

 

職員の出勤状況を記録していくデータ入力作業などは、似たような数字が並んでいて、集中力が欠けるとミスをしがちです。

慌てて終わらせようとせずに、ひとつひとつじっくりと確認しながら入力して、二重、三重にチェックをしてミスがないように心がけていたようです。

 

感謝の気持ちを忘れない

 

初めて取りかかる作業が多いのですが、担当の方が分かりやすく丁寧に、仕事のやり方を教えて下さっていたようです。

教えてもらったらきちんと「ありがとう」と感謝の言葉を言って、分からないところは「教えてください」とはっきりと言葉にすることを心がけていました。

言葉ではっきりと意思表示をすることで、お互いの理解が深まっていたようです。

 

どうすれば、みんなの役に立つのか考える

 

とても忙しい職場のようで、社員の方々は繁忙期には残業も多くなるようです。

そんな社員の方々の役に立つために

「自分にできることはないだろうか」

と考えていたようでした。

 

休憩時間にお茶を飲みながら、新聞や雑誌を見る人が多いようです。

普段から順番通りに物を並べるのが好きな娘は、休憩スペースの新聞や雑誌を、月や日にちごとに並べて整理をしていました。

古くなって読まなくなった物を処分して、休憩スペースの整理整頓をして、上司に感謝されたことがあったようです。

 

「みんなの役に立つこと」は、探せば仕事以外にもあるので、環境を整えることで、他の職員が働きやすくなります。

 

障害者雇用枠で働くということ

 

娘は障害者雇用枠で、障害をオープンにして働いています。

障害者雇用枠での仕事は、単純作業や雑用などの退屈な作業が多いようです。

娘は、パターンが決まっていて、繰り返し行う作業が得意なので

「単純で面倒な仕事は私に任せて!!」

というスタンスで仕事をしています。

 

他の職員が行っている重要な仕事は、自分にできる仕事ではないので、自分は自分の出来ることで役に立つように努めています。

自分の仕事に真剣に取り組むことで、補助的な仕事でも、ちゃんとみんなの役に立っていて、感謝されることが働く上でのモチベーションになっているようです。

「障害者雇用の中での自分の役割」

これを理解することで、他の職員との関係を築きながら働くことができているように感じています。

 

 

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