「広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)」と「軽度知的障害」を持つ長女は、不登校による引きこもりと昼夜逆転の生活を改善するために、グループホームに入居して就労継続支援B型事業所で訓練を受けることになりました。
グループホームへの引っ越しもすんで、いよいよ実際に作業に参加していきます。
ずっと引きこもりをしていて、急に作業に入れるのか心配でしたが、引きこもりをしていたからこそ、頑張れる場合もあります。
就労継続支援B型事業所での作業初日は自分で起きれました
娘は、ここのところ引っ越しのための荷物の整理や、実際に引っ越しをするためにいくらか早い時間には起きられるようになってきていました。
でも、グループホームの起床時間は6時なので、それまでの長い間の生活習慣が急に変わるのは難しいと考えられて、さすがに初日から6時に起きるのは無理だろうと思っていました。
サービス管理責任者(サビ管)のSさんからも「無理しないで起きた時間でいいから少しづつ慣れていこうね」と言われてました。
作業に参加した初日の夕方のことです、Sさんから私の携帯に連絡が入りました。
「おかあさん!娘さんすごいですよ!今朝ちゃんと6時に起きてきましたよ!!」
全く予想していなかった報告に驚きました。
なんとか6時には起きてきたようですが、なかなか目が覚めずにボーっとしていて、みんなと一緒に朝食を食べたり、仕事に行く前のホームの掃除はできなかったものの、8時の出発までには朝食を食べて、身支度をして、一緒に事業所に向かうことができたのだそうです。
明日から作業が始まるから早く寝ようと思っても、そう簡単には眠ることはできないのでは?
と予想していましたが、それでも眠くても6時の起床時間には起きようと頑張ったのでしょう。
確かに初めて作業に参加するのに、起きれる時間に起きて作業に遅れて参加するよりは、無理してでも開始時間から参加した方が作業に入りやすいと思われます。
今までに何度も経験した「遅れて教室に入る気まずさ」を避けたかったのかもしれません。
予想してなかった展開に驚くばかりでした。
引きこもっていたからこそ気付けたこと
B型事業所での作業は、花や野菜の苗を育てる園芸の仕事になります。
長いこと引きこもっていて、体力もすっかり落ちていたようで、作業は休憩しながらそれでも夕方の作業終わりの4時半まで参加できたそうです。
後日電話で教えてくれましたが、その日は疲れて早い時間に眠くなりぐっすりと眠れたようでした。
「よく頑張って起きて行けたね」
と言ったら
「また引きこもりに帰りたくなかったから、頑張って起きれた」
と話してくれました。
ずっと布団の中で好きなゲームをしていたとはいえ、引きこもり生活は本当は苦痛でたまらなかったようでした。
「ゲームは作業が終わって、寝る前に少しだけと休みの日にするだけでいい、一日中していても全然面白くないよ」
一日家にいて何もすることがないと、時間を潰すために仕方なしにゲームをしていたようでした。
「あんな生活はもう絶対にしたくないし、作業がきついと思っても引きこもりよりはずっとマシだから休まずに頑張れる」
と言っています。
「あの時に引きこもりしていたからこそ今は頑張れるんだよ」
と言うのを聞いて、ずいぶん成長したなあと感心するばかりでした。
作業で体を動かせるようになると体調も変わってくる
就労継続支援B型で休まずに順調に働けるようになり、園芸の仕事で昼間に汗を流して動けるようになると、夜中にいつまでも眠れずに起きていることもなく、疲れて早い時間にぐっすりと眠れるようになってきました。
ずっと続いていた悪い循環が嘘のように好転していき、それまで処方されていた精神安定剤も必要なくなりました。
元々やせ型でスリムな体系にも関わらず、まだ18歳なのにお腹がポッコリと出ていましたが、それもすっかり引っ込んで筋肉もついてきて健康的になってきました。
就労継続支援B型の仕事にも慣れてきて、グループホームの生活にも馴染んできたころ障害者支援施設全体の運動会が開催されました。
お弁当を作って応援に行くと、私を見つけて幼稚園生のように走ってきました。
引っ張りまわされて、仲のいい職員に「私のおかあさん」と紹介して回ります。
職員にからかわれながらもに冗談を言ったりして楽しそうでした。
大人が大好きな理由
小学校の頃から学校の先生や学校職員が大好きなんです。
というより、学校では心を許せる相手は学校職員しかいなかったのです。
同じ年ごろの子供たちと話をしたくても、会話がうまくできませんでした。
少し幼い話し方をからかわれたりして相手にしてもらえなかったようでした。
会話のキャッチボールが出来なくて、相手の話に共感できなかったり、自分の好きな話題だと繰り返し何度も話したがるので、嫌がれることが多かったようです。
いつも子供の相手をしている先生や職員だと嫌がらずに聞いてくれて、しかも前に何度も聞いた話でもちゃんと相槌を打ってくれます。
子供相手だとストレートに「知ってるよ、前にも何度も聞いたよ」と突っ込んだり、嫌がって逃げて行ったりします。
自然と話を聞いてくれる大人に近寄って行くようにいくようになっていくのです。
特に保健の先生や事務の先生が大好きで、休み時間になると保健室や事務室に頻繁に足を運んでいるようでした。
PTAで父兄が集って話をしているとよく
「○○ちゃん(娘の名前)は職員と話をするのが好きだね」
と言われたりしましたが、いつも心の中で
「違うんだよ、子供に相手にされないから大人と話しているんだよ」
と言ってました。
居場所を見つけると力を発揮できる
就労継続支援B型でも相変わらず職員が大好きでした。
でも、利用者とも親しくできているようで、顔なじみの利用者を見つけては「私のおかあさんだよ」と紹介されました。
小柄で活発そうなKさんやYさん。
おっとりしているMちゃんは、普段から言葉がなかなか出てこなくて会話が苦手ですが、いつもにこにこ笑っています。
年配の女性を私の前に連れてきて「この人もお友達だよ、でもおかあさんと同じくらいの歳だよ」と言います。
運動会に参加している利用者の方々を見て、最初に思ったのは「けっこう年配の方が多いなあ」ということでした。
施設長も挨拶の時に話していましたが、施設利用者のの高齢化が今後の課題になってくるようでした。
若いときからずっと利用されている方々が、今後別の施設に移動することもなく、そのまま年齢を重ねて行くのだそうです。
いつになくテンションが高い様子を見ていると、やっと自分の居場所を見つけたのだと感じられました。
運動会でのはしゃぎっぷりもなかなかのもので、パン食い競争では勢い余ってパンにたどり着く前に地面に顔から突っ込んでいました。
サービス管理責任者のSさんともゆっくりと話す機会があり、すぐに一日の作業ができるようになった娘はすぐに作業を覚えて、重要な戦力になって周囲を引っ張て行く存在になりつつあるのだそうです。
朝決まった時間に起きられるようになり、周りから必要とされればちゃんと力を発揮することができるようになったのでした。