不登校で引きこもりをしていた広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)と軽度知的障害の娘が、就労継続支援B型事業所で訓練を受けるためにグループホームに入居することになりました。
引っ越しの荷物をまとめるために、今までなかなか入れないでいた娘の部屋に久々に入ってみたら、部屋の中はとんでもないことになっていました。
引きこもり中の娘の部屋には入りにくい
卒業式も終わり、いよい就労継続支援B型事業所に行くために、グループホームに入居する日も近づいてきたので引っ越しの準備を始めることにしました。
実は、娘の部屋に足を踏み入れるのは久しぶりなのです。
普段は普通にリビングに出てきて、会話したりテレビを見たり、一緒にご飯を食べたりしていました。
でも、学校に行けないことは口には出しませんでしたが本人は負い目に感じていたようでした。
私もはじめの頃は「どうして行けないの?」などしつこく理由を聞いたりしていたのですが、娘がそういう話題になると頑なに私を拒否するようになったので、そのうちに学校に行けないことには触れなくなりました。
それでも、私が昼間仕事に出かけている時間は、一人で自由にのびのびと過ごしていたようでしたが、私が休みで家にいると自室に閉じこもるのでした。
そんな時は、やりきれない気持ちを押さえるように布団にくるまってゲームをしたりして過ごしていました。
自分の部屋のドアをきっちりと閉めて、暗くして静かにしている時は誰も入って欲しくないようなので、声をかけることができませんでした。
そんなことが多かったので、自然に娘の部屋にはなるべく入らないようにしていました。
いよいよ部屋に足を踏み入れて片付けを手伝う
娘は片付けることが苦手なので、さすがに引っ越しのための荷物の整理は手伝わないといけません。
「そうだろうな」と思っていましたが、久々に入った娘の部屋は予想通りの事態になっていました。
中学生のころから自分の部屋は自分で掃除する決まりになっていましたが、学校に行けない人が部屋の掃除をする気力なんてないと思います。
私も障害があるとはいえ、年頃の娘の部屋を勝手に片付けることができずにいたので、娘の部屋はもう読まない雑誌や着ない服などが山積みになっていました。
娘と話し合いながら「いるものといらないもの」を分けていくと、せまい部屋からたくさんのゴミが出てきて、何度も往復してゴミ捨て場までゴミを捨てに行きました。
洗わないでそのままにしていた洗濯物もたくさん出てきて、洗濯機も何回も回しては乾燥機にかけました。
引きこもるまでは、きれい好きで自分で部屋の掃除をしていましたし、洗濯物をためたりすることもなく、規則正しい生活をしていました。
そんな娘でも「学校に行けない」という事実に追い込まれたら、そんなことはどうでもよくなってくるのだと感じました。
シーツに人型のシミが?!・・・
荷物が片付いてきたら、いつも敷きっぱなしになっていた布団をきれいにする番です。
いつも娘がいないのを見計らって、シーツを洗濯したり布団を干したりしようと思っていました。
しかし、布団は娘の心を落ち着かせるための大切な場所でもあるのです。
小さい頃から嫌なことがあると布団に潜り込んで心を落ち着かせていました。
学校から帰ってきてすぐに布団に直行するときは、からかわれて嫌な思いをしたり、仲間に入れてもらえなくて辛い想いをしたのだろうと思われました。
布団にくるまってうつろな目でボーっとしていることがよくありました。
しばらくそうしているうちに元気を取り戻して、普段と変わらない明るい笑顔で話しかけてくるのでした。
広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)の人にとって、落ち着ける場所はとても大切な場所でこだわりも強かったりします。
私が家にいる時間は娘はほとんど布団にくるまっていたので、うかつに手を出せないでいました。
意を決して布団を広げてみるとシーツに人型のシミと青春の臭いが・・・
まるで凄惨な事件でもあった後のようになっているのを見て、二人で笑うしかありませんでした。
その時のことは今でも笑い話としてよく話したりします。
私も娘も「辛い」とか「悲しい」とかあまり口に出して言うことはありませんでしたが、やはり学校に行けないというのは緊急事態で、普通の状態ではありません。
そんな緊急事態が長く続くと、“掃除をしないと部屋が汚れてくる”とか
“シーツを洗って布団を干さないと不衛生”だとかそういった当たり前のことから目を背けていくようになっていました。
現実から逃げて見ないようにしていたら、気が付いたらビックリするようなことになっていました。
シーツを洗わないで使っていると、人型のシミがうっすらと浮かびあがってくるんですね。
いつも同じポジションで眠っていたのだろうと思われます。
汚い話しですいません。
洗濯機で洗ってみましたが、シミは落ちなかったのでシーツは捨ててしまいました。
シミのついたシーツは三年間の引きこもりの象徴みたいに思われました。
シーツをゴミに出した時は「これでやっと引きこもりともお別れできる」
と感じてとても気持ちが晴れた気がしました。
引きこもりっていろんな意味ですごいです。
三日がかりで部屋をかたずけて、荷物をまとめました。
就労継続支援B型事業所で働くためにグループホームに行く直前の出来事でした。