洋楽ロックの名盤 TOTOのアルバム聖なる剣をアナログレコードで聴いた感想

Rock

 

1982年、TOTOの4枚目のアルバム、TOTO Ⅳ(邦題:聖なる剣)が発売され、「ロザーナ」が1枚目のシングルとしてリリースされました。

ビルボードのチャートで5週連続2位を獲得するヒットで、連日のようにラジオから流れていました。

 

それから少ししてから、テレビで武道館で行われたライブが放送され、TOTOの魅力的な楽曲の数々を聴いて、またライブの迫力ある演奏と、楽し気にプレイするメンバーを見て、TOTO Ⅳを購入したのでした。

アナログレコードを聴きながら感じた「TOTO Ⅳ(聖なる剣)」についての感想と、アナログレコードの味わいについてお話ししていきます。

 

 

近所のレコード屋さんでアルバムを注文する

 

 

武道館ライブを観てからTOTOのアルバムが欲しくてたまらなくなったんのですが、町内には小さなレコード店が1件あるだけで、お店に並んであるレコードの半分以上が演歌で、残りで歌謡曲、かろうじてポップスが数枚置いてあるだけで、とてもTOTOのようなロックはみられません。

 

それでも、学校帰りに立ち寄って並んであるLPレコードをパタパタと(四角い箱の中に数枚立てかけて並べてあるのでそういった探し方になります)倒しながら見ていると、お店番をしていたおじさんが

「欲しいレコードがなかったら注文するよ」

と声をかけてきました。

そこで思い切って

TOTOの聖なる剣はありますか?」

と聞いてみたら

「あー残念!!昨日まではあったのになあ・・・いいよ、注文しようか?」

と言われて、アーティスト名とアルバムタイトルを告げて帰りました。

 

でも、昨日まであったなんて本当なの?

ロックのレコード1枚も置いてないのに?・・・

まあ、その後も「デフレパードのハイ&ドライ」や「スコーピオンズの禁断の刺青」などの絶対に置いてなさそうなゴリゴリのハードロックのアルバムを注文した時も

「昨日まであったのにー」

と言われたのでかなり怪しいと思います。

 

それから1週間ぐらいしてレコード屋さんに行ってみると、ありました!!TOTO4枚目のアルバム聖なる剣がちゃんと届いていました。

アーティスト名とアルバムタイトルを言っただけで、私の住所も名前も電話番号も言わなかったのに。

人を全く疑わないのが田舎のいいところで、フラッと立ち寄った中学生のこともちゃんと信用してくれて、欲しいアルバムがお店に並べてあったためしなどないけど、おじさんに言えば大概手に入りました。

どんなレコードでも必ず「昨日まであったのにー」のセリフは毎回聞かされましたが・・・

 

レコードプレイヤーにセットして針を落とす

 

家に帰ってさっそく父のステレオセットで聴いてみました。

昔のステレオセットって大きくて大仰なんですよね。

スピーカーなんて幅が20~30cm、高さが50~60cmくらいありましたもんね。

そこに巨大なつまみやポッチがついたアンプ、レコードプレイヤー、ダブルカセットデッキがデンデーン!と鎮座していて、もっと前のタイプだと木目調のデザインだったりしました。

その前に神妙な面持ちで座って、ターンテーブルに12インチのレコードを乗せて慎重に針を乗せる。

丁寧に扱わないと針が折れてしまったり、レコード盤に傷がついたりするので、レコードを聴くときは少し緊張します。(小さい頃に針を折ってめちゃくちゃ怒られたことがある)

自分の部屋では聴けないのでレコードを聴いている45分間余りの時間は、リビングにじっと座ってありがたく耳を傾けるものでした。

 

本物のオーディオセットは無理でも、ミニチュアで気分だけでも味わうのもいいかもです

A面の1曲目はロザーナ

「パチパチ」とレコード針の微かなノイズの後に聴こえてくる1曲目は、第1弾シングルカットの「Rosanna(ロザーナ)」です。

 

 

心地よいテンポのジェフ・ポーカロのドラムで始まり、ジャス風なリズムの不思議な魅力のイントロから続く、スティーブ・ルカサーの語りかけるようなボーカル。

そこから繋がるボビー・キンボールのハイトーンボイス。

終始ドラマテックな展開が繰り広げられ、最後は古びた酒場で耳にするようなピアノのメロディで終わりを告げる。

今までに聴いたことがない、圧倒的な展開が繰り広げられる曲にすぐに夢中になりました。

当時は全然知らなかったのですが、ロザーナのリズムの心地よさは「ハーフタイムシャッフル」と呼ばれるドラマー泣かせの複雑なリズムによるものでした。

 

ロザーナのリズムは、世界一のドラマーと定評があるレッド・ツェッペリンのジョン・ボーナムが「Fool in the Rain」の中で叩いたシャッフルビートと、ジョン・ボーナムがリスペクトするドラマー、バーナードパーディがスティーリー・ダンのアルバムで参加した曲「Home at Last」のリズムを参考にしています。(ジェフもスティーリー・ダンのアルバムに参加していますので、繋がりがあったと思われます)

さらに、アメリカのロックンロールギタリストのボ・ディドリーが生み出した「ボ・ディトリービート」も付け加えて、ジェフ・ポーカロが編み出したリズムで「ロザーナシャッフル」とも呼ばれたりします。

 

かなりの技術が必要なリズムになるので、ジェフ・ポーカロがどれほど敏腕なのかが伺えます。

残念なことにジェフは1992年に38歳の若さで亡くなっています。

 

A面の流れ~激情のバラード ホールド・ユー・バック~

A面の2曲目は「Make Belive(メイク・ビリーヴ)」でアメリカでは第2弾目のシングルカットになります。

続いて3曲目の「I Won’t Hold You Back(ホールド・ユー・バック)」は4枚目のシングルです。

スティーブ・ルカサーの曲で、ボーカルもスティーブになります。

 

2013年の35th Anniversary Tour – Live In Polandの映像です。

 

優しい歌いだしのボーカルで始まり、サビに向かってドラマティックに盛り上がっていきます。

途中でバックのストリングス(オーケストラの弦楽器)と共にスティーブによる泣きのギターソロがぐんぐんと上りつめていく激情のバラードになっています。

 

4曲目の「Good for You(グッド・フォー・ユー)」から5曲目の「It’s a Feeling(イッツ・ア・フィーリング)」に流れていきます。

しっとりとしていて憂いを帯びた「イッツ・ア・フィーリング」はキーボードのスティーブ・ポーカロの曲で、自身で歌っています。

 

この曲でA面が終わり、レコード盤の端まできたレコード針が自動で静かに元に戻ります。

 

レコードを裏返してB面へ

ここで、レコードを裏返して再び針を落としてB面に入ります。

 

ハードなギターが印象的な「Afraid of Love(アフレイド・オブ・ラヴ)」が軽快なテンポで始まります。

アメリカなどの欧米では「メイク・ビリーヴ」が第2弾シングルカットになっていますが、日本では「アフレイド・オブ・ラヴ」が2枚目のシングルです。

続いて「Lovers in the Night(ラバーズ・イン・ザ・ナイト)」から「We Made It(ウィ・メイド・イット)」とアップテンポな曲が続くのですが、10代の頃はこの流れがけっこうお気に入りでした。

 

アナログレコードは外側のカーブが緩やかで、内側はきつくなっていて、外側から内側の溝に向かって針が回っていきます。

カーブのキツイ内側には大きな音が入れにくいので、アピールしたい曲やアップテンポな曲がA面、B面の始めの方に来て、スローな曲が最後に来るようになっています。

A面のラストが静かな曲で終わって、レコードをひっくり返してB面に入ってテンポのいい曲が始まる流れが、すごくしっくりとくるのです。

 

繰り返し、繰り返しレコードを聴いていると、曲の流れが頭の中にすっかり出来上がっていて、曲の終わりには次の曲が聴こえてきたりします。

38年経った今でも曲の流れがしっかりと染みついていて、別のところで聴く時に曲順が変わっていると気持ち悪かったりします。

 

アフリカがアルバムのラストを飾る

アルバムのラストの曲「Africa(アフリカ)」は、ビルボードのチャートで1位を記録した大ヒットナンバーで、TOTOの代名詞のような曲です。

 

 

2018年に「ウィーザ―」がカバーして再び注目を集めたこともありました。

 

異国情緒あふれるエキゾチックなこの曲は、一度も行ったことがないアフリカという未知の国に想いを馳せてノスタルジックな気持ちで作られた曲です。

デヴィット・ペイチが作った曲で、歌っているのもデヴィット・ペイチになります。

 

「アフリカ」がシングルになるまでは、アルバムの最後に入っていて他の曲とは全くイメージが違う曲くらいに思っていました。

TOTO Ⅳのアルバムの曲はいわゆる「はずれ」の曲がなくて、A面の「ロザーナ」から始まってB面にひっくり返して4曲目の「Waiting for Your Love(ウェイティング・フォー・ユア・ラヴ)」までずっとハイテンションのまま聴いていました。

そして最後に「アフリカ」でなんだかホッとして、いい時間を過ごせたなあという感じで聴き終わるのでした。

 

それがシングルカットされて、ラジオから流れてきたのを聴いた時に

「あれ?これがあのアルバムラストのアフリカなの?」

と今までと違う印象を持ったのです。

 

静かで単調だけど楽し気なリズムを聴いてると、自然に体がリズムに合わせて揺れ動いてしまい、繰り返されるシンセサイザーの音が耳に心地いいんです。

サビの美しいメロディになると、パーっと目の前が広がっていくようで、果てしなく続く広い地平線を思い浮かべさせられました。

「アフリカってこんな壮大な曲だったんだ・・・全然気がつかなかった・・・」

 

シングルになって、「アフリカ」を単体で聴いてはじめてこの曲の良さを再認識させられたのでした。

実際にメンバーも「正直ここまでヒットするとは思わなかった」と言っています。

 

4枚目のアルバム「TOTO Ⅳ」がグラミー賞でレコード・オブ・ザ・イヤーやアルバム・オブ・ザ・イヤーといった主要部門を含む6部門を受賞するのに背中を押してくれた曲が「アフリカ」なのかなと思います。

 

最後に

 

最近は音楽を聴くときは車の中で聴いたり、家事をしながら流したりで、ほとんど何かをしながら聴いていることが多いです。

CDで聴くこともありますが、サブスク(サブスクリプション)などの持ち歩ける音楽サービスを利用することが多くなっています。

簡単に聴けて、どこにでも持ち歩けてとても便利で、好きな音楽が生活と共にあるので楽しい時間を過ごせています。

 

TOTO Ⅳ(聖なる剣)は10代の頃ように、わざわざ手間をかけて音楽を聴くためだけの時間を作ってじっくりと聴きたいなと思える1枚です。

今はなかなかそういった環境を作れないので、紅いアルバムを眺めながらレコード針のノイズの音を思い出したりしています。

 

 

 

TOTO Ⅳ(聖なる剣)を身近で楽しむなら

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