チャレンジ雇用で障害者が健常者の中で働く上で大切なこととは

就職活動

 

「広汎性発達障害」と「軽度知的障害」の娘がチャレンジ雇用で採用されて、公共機関で臨時職員として1年間の契約で働きはじめました。

役所のお仕事をする健常者の方たちに囲まれて、障害者として毎日一緒に働いています。

立場の違う人間が自分一人だけしかいない職場での苦悩もあったりしますが、理解のある方たちに助けられて仕事に励んでいます。

 

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チャレンジ雇用の仕事の内容は?

 

4月1日から早速仕事に出かけて行きました。

最初に任された仕事は

  • コピー用紙の補充
  • お客さんに渡すパンフレットのセット作り
  • 訂正スタンプ押し

でした。

 

コピー用紙の補充

自分の働く部署にあるコピー機の用紙の補充をします。

朝、一番にコピー機に用紙が全て入っているかの確認をして、後は定期的に確認をして用紙が少なくなっていたら補充します。

 

お客さんに渡すパンフレットセット作り

お客さんに案内するパンフレットのセットを作ります。

数枚ずつコピーされたパンフレットの各用紙を順番に揃えていって、ワンセットずつ封筒に入れておきます。

 

訂正スタンプ押し

この仕事が一日の大半を占めるようです。

お客さんに渡す申請書用紙などの、修正が必要だけどまだ作り直しができていない部分に、二重線のゴム印を押して上に訂正された言葉のゴム印を押していきます。

平成から令和に元号が変わった時にはこの仕事が殺到して、一日中令和への訂正ばかりしていたようです。

 

繰り返して行う単純な作業は得意です。

お願いされれば一日中でも集中してこなしますが、さすがにずっと同じことばかり繰り返してやっていると、お昼ご飯の後の2時~3時ごろは眠気との戦いになります。

眠くなるのをひたすら我慢して、作業に集中するのが大変だと言っています。

 

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仕事に慣れるまでが大変でした

 

チャレンジ雇用に採用される前にWAISⅢ(ウェクスラー成人知能検査)を受けていて、採用が決まったので「新たに仕事をはじめる上で気を付けること」を臨床心理士さんに教えてもらいました。

 

・聞いたことを覚えるのが苦手なので、一度に複数の指示や口頭だけの指示が理解しにくい。

・聞いたことを頭の中で整理するのに時間がかかるので、担当の人がゆっくりと個別で話をしながら、分かりにくい作業は実際にやってみせることが必要。

・自分の言いたいことをまとめるのも苦手で困っているサインも出しにくいので、いつも助けてくれる人がいるという安心できる雰囲気が必要。

・場面に応じて自分で考えて動くのが苦手で、相手が何を言ってきて何を求めていてるのかを考えながら、自分の行動を決めるとなると情報を処理しきれずにパニックになるので、一日のスケジュールに見通しがついてあまり変化がないことがいい。

・臨機応変に行動するのが苦手、仕事をパターン化し、覚えた単純作業を丁寧に繰り返すことは得意。見ながらの作業は得意で、丁寧に最後までやりとげられる。

 

本当はもっと詳しく書かれていますが、簡単にまとめました。

これだけたくさんのことを担当の方にお願いするのは心苦しいのですが、お互いがうまくやっていくためにと思ってコピーを渡しました。

それでも忘れてしまっていたり、ついうっかり言葉の選択を間違えることもあると思います。

指示の中で「周りを見て空気をよんで動いてね」と言われたことがあって、仕事から帰ってから

「空気ってどうやってよめばいいの?空気をよんでと言われたけど・・・」

と泣きそうになって訴えてきました。

「空気をよむ」のが一番苦手です。

「そう言われたら『空気ってどうやってよんだらいいのか分からないです』とはっきりと答えていいんじゃない。できないことはどうしてもできないもんね」

と話したりしました。

 

慣れない職場で慣れない仕事をする毎日は緊張の連続だったと思います。

毎日こわばった顔をして帰ってきました。

私が想像するよりはるかに気を使っていて、疲れ方も酷かったようでした。

 

仕事に行き始めてからの2か月は頻繁に体調を崩して仕事を休んでいました。

原因不明の熱発があったり、もともと持っていた「慢性鼻炎」や「月経前症候群」や「月経困難症」が酷くなり、朝起きてこないので見に行くと布団の中で真っ青になって「頭が痛い、お腹が痛い」と言ったりしていました。

職場への体調不良で休む連絡は、地域障害者職業センターや就労移行支援事業所での訓練中に練習していますが、これだけ頻繁に体調を崩して休むとなると、どう相手に分かってもらえるように伝えているのかが気になります。

本人は「ちゃんと伝えているよ」と言っていますが「ちゃんと」はいったいどこまで「ちゃんと」なのか・・・

悩みますが、娘と職場の問題なのでどこまで介入したらいいのか難しいです。

 

一度、部署の責任者の方に個別で呼ばれて、説明を求められたことがありました。

持病のことと、慣れなくて緊張して疲れて体調を崩していることを伝えたようですが、自分のことをうまく言葉で説明するのが苦手なので、どこまで伝わったのかが気になります。

わかってもらえたようなので、伝えられていると思うのですが・・・

今後、体調について説明が必要になったら、言いたいことを紙に書いて内容を整理させて、紙を見ながら説明するか、書いた紙を渡してもいいのかな。と思ったりしています。

 

仕事に慣れてきたら周りも見れるようになった

 

仕事にも慣れてくると徐々に他の仕事も任されるようになってきました。

パンフレット作りもパンフレットを揃えるだけではなくて、少なくなった用紙のコピーをするようになりました。

他にも部署に保管してる書類のファイルの整理を手伝ったり(ファイルの背表紙にテプラで印刷した見出しをはるなど)して、作業の進み具合をみながら補助的なお手伝いを頼まれます。

はじめのうちは、仕事をお願いしてくるのは担当の方だけでしたが、徐々に他の人も頼みたい仕事が出てきたら、様子を見てお願いしてくるそうです。

 

仕事に慣れてくるようになると、周りが忙しそうにしているのをみて「なにかお手伝いを」と思って、決められた仕事ではないのですが、カウンターに並べてあるお客さん用の申請書などを進んで補充するようになって、部署の方々に喜ばれたようです。

「自分ができることがなにかないのか?」

と自ら仕事をさがして行うようになれたのは、就労継続支援B型事業所での作業で身に付いたようです。

 

B型事業所の仕事は、花や野菜の苗を育てて販売する仕事で、育てた苗を契約して納めていたので、苗の成長具合で仕事を急がないといけなかったり、納期が発生したりしていました。

忙しくなると「今日中に仕事が終わらない、急がないといけない」ということが起きて、手が空いたら今の作業の進み具合を確認して、自分にできる仕事を考えて探すようになったそうです。

 

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部署の方々とのおつきあい

 

チャレンジ雇用で同じ年に採用されたのは娘を入れて3名ですが、後の2名は男性で部署も違うので全く交流がありません。

部署では担当の方が一人ついて仕事を教えてくれたり、様子を見ながら次の作業の指示を出してくれます。

担当の方とは自然に話をしたり、相手の方から話題を振ってもらったりしていたようですが、ずっと一緒にいるわけにはいかないので、時間が合わなかったりすると、一人でお弁当を食べたり休憩を取ったりして、一日誰とも会話しない日もあるようでした。

 

職員となにをどうやって話したらいいのか分からないし、いつも一人で寂しいのが悩みでした。

今までの就労継続支援B型事業所や就労移行支援事業所では、いつも同じ立場の障害者に囲まれていてにぎやかな様子で、障害者のことをよく分かっている職員も常に周りにいて、会話したり時には冗談を言い合ったりして和気あいあいと過ごしていました。

さすがにチャレンジ雇用の職場だと同じようにはいかなくて、理解はしているけど寂しく毎日仕事に出かけていました。

 

ある日のこと、休憩をしていると男性の職員に

「どうですか?慣れてきましたか?女性の職員とは仲良くしてますか?」

と話しかけられて

「他の職員と仲良くできていないのを責められている!パワハラだ!!」

と言い出しました。

ちょっと被害妄想を起こしているようです。

 

「それはただのあいさつで、あなたに話しかけたかっただけで、女性の職員と仲良くなれないのを責めているわけじゃないんだよ」

「そうなの?わからなかった」

「そういう時は“まあまあです”とか“ぼちぼちです”と答えておけばいいんだよ」

 

微妙な大人のやり取りが難しい様子でした。

 

歓迎会を通して仲良くなれる

 

部署で4月に新しく入った人の歓迎会が行われることになり、娘にもお誘いが来ました。

「行かないといけないの?お酒も飲めないし、話したことない人ばっかりだし」

「だから行くんじゃない!普段は話をする機会がなくても、こういう時だと話しやすかったりするんだよ

と話したら、一次会だけ参加すると言って出かけました。

 

帰ってきたときは上機嫌でした。

担当の方や年配の方々にネコ好きの人が多くて、小さい時からずっとネコと過ごしている娘はネコの話題だったらたくさんあります。

私と一緒に見るようになった「朝の連ドラ」の話題でも盛り上がったそうです。

娘と同じ年ごろの女性の職員もいて、ずっと同じ年ごろの人と話をしたいと思っていたようですが、いったいどんな話をしたらいいのかが分からないでいました。

その人とも話すことができて、その女性はアニメオタクの娘と好きなアニメが同じで、そこでも共通の話題が見つかって話ができたようでした。

 

その頃から仕事に行くのが楽しくなったようで、休憩時間や昼食の時間もいつもだれか話し相手がいて、寂しい想いをしなくなりました。

話すことによってお互いのことを知るようになると、どんな様子で仕事をしているのかも考えるようになって、なにか役に立ちたいと思えるようになったようです。

最近の忘年会では、おじさん職員とも親しくなった様子で、「もっといたかったけど明日も仕事だから仕方なく帰ってきた」と言いながら帰宅しました。

 

チャレンジ雇用で働きだして感じたこと

 

職場で認められる、仕事で誰かの役に立つ経験は成長に大きくつながっていくようです。

 

以前に私が高熱を出したときは、いったいどうしたらいいのか分からなくてパニックになったようで、自分の部屋に引きこもってヘッドホンで音を遮断して逃げ出してしまいました。

去年の年末に二人で大掃除をしていたら、私が足を痛めて歩けなくなってしまいました。

大みそかは娘が一人で頑張って、終わっていない掃除の続きをしたり、買い物の荷物持ちをしたり、夜はすき焼きの準備をしてくれました。

途中で投げ出しそうになったり、出来なくてパニックを起こしそうになりましたが、自分が年越しの準備をしないといけないと思って、家族の役に立ちたいと頑張ったようです。

社会に出て働きだしたことで意識が変わってきたのだと感じました。

 

娘の職場に行って働いている様子を見たわけではないのですが、知的障害者が健常者のなかで働く上で大切なことは

 

  • 指導されたことは素直に聞く。
  • わかったことや出来ないことははっきりと伝えて、しっかりと返事をする。
  • 役に立ちたいという気持ちで仕事をする。

 

こういったことだと思います。

 

お互いの立場を理解して、協力し合うことで障害者も健常者も一緒に働けるのだと思います。

 

 

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