公共機関のチャレンジ雇用で娘が働きだして3ケ月が経とうとした頃でした。
その年の梅雨はかつてないほどの長雨が続いて、土砂災害に対して注意喚起が言われていました。
梅雨の終わりごろ、天気予報では記録的な豪雨の予報が発表されました。
過去に大規模な水害が起こった地域に仕事に行く娘たちと、災害が起こった場合のことを話し合いました。
もし災害が起こったら?
ずっと長雨が続き、何度か大雨警報が出ていましたが、明日はこれまでにない豪雨の予報が出ていて避難も考えなければならない状態でした。
警報が出るたびに、もし災害が起こったらどうしたらいいのかを話し合ってきました。
自宅は山手の方にあるので、水害については心配しなくてもいいですし、土砂災害が起こるような地形でもないので避難についてはそれほど考えなくてもいいようです。
しかし娘たちの職場や学校は、過去に河川が氾濫して大きな洪水が起きた場所でした。
通勤中や仕事中に避難が必要になったらどうするか?
避難場所を調べると、川の近くの低地なので水害の場合の避難場所が近くにありませんでした。
チャレンジ雇用の担当者に相談したら
「職場の一番上の階にみんなで逃げるしかないよね」
と言うことだったので、避難用具を職場に持って行ってしばらくロッカーに入れておいていました。
電話やメールが使えなくなった場合にSNSが便利だった。
という話も聞いていたので、緊急用としてお互いのSNSのアカウントを教え合ったりしました。
“出勤は無理しないでね”をどう受け止めるか?
いよいよ明日は豪雨の予報が出た時に、部署の課長さんから帰宅する前に
「明日は雨の様子をみて出勤は無理しないようにね」
と言われました。
帰宅した娘が
「おかあさん、無理しないではどういう場合が無理しなくてもいいの?」
と聞いてきて返事に困りました。
広汎性発達障害や軽度知的障害だと「無理しないで」とか「様子を見て」の曖昧な表現を理解するのが難しくなります。
私も明日の朝の状態を見ないとなんとも言えないので「様子を見て雨が激しかったら対応しよう」と曖昧な言い方をするしかありませんでした。
以前「頭が痛い」と言って早退して帰ってきたことがありました。
部屋でくつろいでいるのを見ていると、どうもそれほど痛くてたまらないような感じでもないのです。
「頭が痛いのはどれくらいの痛みなの?我慢できないほど痛いの?」
と聞いてみると、やはりそれほど痛くはないようです。
「職場の人が“無理しなくてもいいからね”と言うから無理しないで帰ってきた」
と言うのです。
「“無理しなくていいからね”と言われても少しは無理しないといけない場合もあるんだよ。
少しくらいのことで簡単に仕事を休んでいたら、周りに迷惑がかかるでしょ。
あなたがいないことで、あなたの仕事をだれかが代わりにしないといけなくなるし、頼もうと思っている仕事もあったかもだよ。
頭が痛くなってもあと少しだけ頑張ってみて、それでもどうしても我慢ができなかったら帰って来てもいいんだよ」
という話をしたことがあります。
「無理しないで」を言葉のまま受け取ってしまうことがありますし、本当に無理をしなくてもいい場合には頑張りすぎてしまうこともありますので「曖昧な言葉の理解」や「周りの状況を見る」のが難しいときが多いです。
“様子”を手に取ってみる方法
朝になりましたが、空はどんよりと曇っているものの小雨が降っているくらいで、出勤はできる状態ですがお昼前には大雨になる予報が出ています。
とりあえず出勤してみて様子を見て雨が激しくなって帰れなくなる前に帰ってこよう。
となったのですが“様子”っていったいどうやってみればいいのでしょうか?
具体的な表現でないと理解が難しくなります。
それに、障害者でなくても災害時の“様子をみる”判断が難しくて帰宅できなくなることが多いのです。
「どうしたもんか」
と考えていると、テレビの天気予報の報道ではしっこにQRコードが表示されていて、読み取ってみると『防災アプリ』がダウンロードされました。
NHKニュース防災アプリでした。
無料でダウンロードできます。
開いてみると、防災に関する情報がリアルタイムで受け取ることができて、便利だったのですぐに娘にもダウンロードさせました。
地域を選択すると住んでいる地域のニュースや災害情報が表示されます。
本日、雨が降っているのは石川県付近でしたので、金沢市を表示してみました。
災害情報をタップすると「気象警報・注意報」「避難情報」「災害関連情報」が表示されます。
今日の金沢市は「雷注意報」「強風注意報」「波浪注意報」がでていました。
地図上で注意報や警報の状況も見ることができます。
ここに「警報」や「特別警報」が表示されたり「避難勧告」や「警戒レベル3」や「警戒レベル4」が表示されたら、担当の人に相談して帰宅させてもらうように娘に言いました。
便利だったのは河川の状況が表示されることでした。
今日の金沢市の降水量はそれほど多くないようなので、青色で表示されている「今後の情報等に留意」となっていますが、降水量が多くなり水量が増えてくると黄色の「注意」から赤の「警戒」に変わっていきます。
大河川の場合だと河川カメラが設置されている場合もありますので、現在の河川の様子を画像でも見ることができます。
職場の近くの川が赤色の「警戒」に変わったら帰る準備をするようにと伝えました。
こうやって“様子をみる”が手元で分かりやすく見ることができるので、安心して出勤していきました。
出勤してから4時間くらい経ったら雨の降り方が激しくなりだし「警戒レベル4」が発表され「全員避難」が発令されました。
すぐに娘から「仕事を止めて帰ることになったよ、課長さんが家まで車で送ってくれるって」とメールが入ってきました。
わざわざ自宅まで送っていただいてとてもありがたかったです。
一部の川が氾濫して床上まで浸水した家屋がありましたが、それほど大きな被害はなく心配した事態には至りませんでしたが、初めて災害が間近に迫る体験をして、日ごろからの準備や心構えの必要性を身に染みて感じました。
このアプリは大雨の後も重宝して使っています。
出掛ける前に雨が降りそうだなと思ったら、雨雲の様子を見ることができるので、傘が必要なのか洗濯物をどうしようかと思う時に開いて確認しています。
現在は台風が発生していないので台風の表示ができないのですが、台風シーズンにも重宝しました。
ヘルプカードも作っておいたらよかった
この時の大雨の後で「ヘルプカード」の存在を知りました。
ヘルプマークは以前から知っていました。
2012年にに東京都で配布が始まって全国に広がっていきました。
外から見ても障害があることが分からない内部障害がある人や、難病の人、初期の妊婦さんなどの周囲の支援や配慮の必要な人が困っていることを知らせるマークです。
カバンなどにぶら下げておいて、電車やバスを利用するときなどや、とっさの場合や予測できない事態に周囲に手助けをもらえます。
出典:東京都福祉保健局
娘の場合は、高校生の時から電車やバスを一人で利用していて、特に問題なく利用できていますし、外でパニックになってどうしようもできなくなったことはありませんので、ヘルプマークの利用については全く考えていませんでした。
ヘルプカードだと普段は目に見えるところに表示していなくても、災害時などの緊急事態や予測ができない状態になった時に、提示することで助けを求められます。
出典:東京都福祉保健局
カードに注意事項を書き込むことができて、普段は財布などに入れておいて、いざという場合に利用できます。
娘は普段は、一見障害があるようには見えないので、道を歩いていたらお年寄りや外国からの観光客から道を聞かれることもあります。
もし、災害が起きて一人で避難となった場合に、手助けが必要な障害があるようには見えずに、理解をしてもらえない場合がでてくるかもしれません。
人の多いところや騒がしいところも苦手です。
普段とは全く違う予測ができないことが起こり、パニックになってしまう心配がありますので、ヘルプカードを携帯していると“いざ”という場合に安心できるのではと思いました。
まだ全ての自治体で利用はできないようですが、私たちの住んでいる地域では作ることができますので、申請しておこうと考えています。
災害が起こりそうになって考えたこと
身近に災害が迫って来ないと、その時のために何を準備しておくのかはなかなか考えられませんでした。
今回は、大した被害も出ずに避難することもなく終わりましたが、またいつどんな災害に遭遇するかわかりません。
起こる可能性のあることを予測して、普段から準備しておいていないと、その時になって慌てても対処できないことが多いです。
社会人になると一人で行動することも多くなるので、安心して行動できるように普段からの備えが大切だと感じました。
追記:今年の梅雨に入る前に、「ヘルプカード」を作っておきました。
普段は財布などの常に持ち歩く物の中に入れておいて、万が一災害などにに合ってしまって困った時などに使うようにしています。
私の住んでいる自治体の場合は、ヘルプカードの作成には手帳とか障害を証明する物も必要ありませんでした。
10分くらいで終わる簡単なアンケートに答えるだけで作れました。