就労移行支援事業所で接近してくる男性への対応について考えた

就労移行支援

 

「広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)」と「軽度知的障害」の娘は、5年に渡る就労継続支援B型での訓練を終えて、地域障害者就職センターで訓練を積んで、就労移行支援事業所で訓練を受けています。

就労継続支援B型でも障害者就職センターでも、いろんなタイプの障害を持つ人たちとの人間関係に悩まされてきましたが、就労移行支援事業所でもやはり人間関係が問題になってきます。

 

就労継続支援B型でも、就労移行支援事業所でも作業中に突然大きな声を出したりする人がいるようですが、それは全然気にならないようでした。

突然のパニックには必ず原因があります。

どうしても我慢できないことが起きて、どうして困っているのかうまく言葉で説明できない時など、もどかしくて大きな声を出して訴えるしかなかったりする場面が多いようです。

娘はそういう気持ちはよく分かるので、大声を出す人がいても見守っていられると言っています。

 

10代から20代のはじめの頃は、自宅にいるときだけでしたが、嫌なことがあっても気持ちを説明して訴えることができずに、叫んだり物に当たたっりして暴力的な行動が見られていました。

B型事業所でも気持ちが抑えられずに、窓ガラスをパンチで割ったことがあります。

成長することで大人の会話が増えてきて気持ちをうまく説明できるようになると、冷静になれてあまり感情をあらわにすることが少なくなってきました。

しかし、異性からしつこくつきまとわれることは我慢ができないようでした。

 

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困った行動をする人がいて就労移行支援事業所に行けなくなる

 

就労移行支援事業所で訓練を始めて、働くことの大切さや働く意味を感じながら作業できるようになり、順調に毎日訓練に通っていました。

 

ある日、風邪をひいて2日ほど仕事を休んでしまい、風邪が治って体調も整ってきて「明日は事業所に行けるね」と話していたにも関わらず、3日目も4日目の起きれずに事業所を休むことになりました。

風邪が治ったようでも体力がまだ回復していないのかな?疲れも溜まっていたのかな?と思いながら様子を見ていましたが、さすがに5日目も起きてこないとなると、原因は風邪だけではないのでは?と思いました。

「事業所に行きたくないみたいだね、なにか行きたくない訳でもあるの?」

と聞いてみたら、事業所で起きている嫌なことを話しだしました。

 

事業所に行きたくない原因は、一緒に作業をしている男性にしつこくつきまとわれるのが嫌で耐えられないと言うのです。

その話は前からチラホラ耳ににしていました。

「そういう時は近寄ってきたらさっとかわして逃げたり、無視をして相手にしなければいいんじゃないの」

と言ったら

「いつもそうしているよ、でもこっちが嫌がっているのにしつこく近づいてきて逃げても追っかけてくるんだよ」

なのだそうです。

 

たぶん、娘に興味があったり、好意を持っているのではないかと思われます。

知的障害を持つ人には自分の気持ちが隠しきれずに、やりたいことをストレートに行動に移してしまう人がいます。

こっちは嫌がっている、迷惑に思っているという行為をみせても、抽象的だったり遠回しに伝えたりしたらなかなか理解してもらえません。

だから、はっきりと「イヤなので近づかないでください」

と口に出して伝えないと分かってもらえないよ。と話していました。

でも本人を前にすると、人を傷つけかねない言葉を直接かけるのにためらってしまい、結局言えずじまいでずっと嫌な思いを我慢していたようでした。

作業中にふと気が付くと真後ろにピタッとくっつくように立っていて「ドキッ」としたことがたびたびあるようです。

 

広汎性発達障害の特徴で「感覚過敏」があり、「いきなり」や「後ろから」は苦手です。

そうでなくても、背後に体格のいい男性がいきなり立っていたら誰でも驚くと思います。

もう本人一人では解決できないと思い、職員に相談することにしました。

 

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男の子への接し方がわからなかった思春期

 

知的障害者の異性への興味や恋愛の問題は、性についてのデリケートな面を理解できなかったり、理解できても感情のコントロールが難しかったりして、思春期になったら避けて通れなくなる問題です。

性への興味はプライベートな問題ですので、親とはいえども安易に踏み込むことは躊躇されますが、きちんと教えないでいると大きな問題につながってしまいます。

娘も思春期に入った頃から少しずつ問題が起きてきました。

小学校の高学年になると、だんだん異性に興味があるのでは?という行動が見られるようになりました。

 

私たち家族は娘が中学3年生まで過疎の進む田舎で暮らしていました。

通っていた小学校が全校生徒30人ほどの小さな学校でした。

娘の学年は同級生の女の子が娘を入れて4人しかいなくて、仲間に入れてもらえない娘はいつも独りぼっちでした。

そのせいか、男の子の仲間に入りたがりましたが、男の子たちも年頃になると女の子と遊ぶのが恥ずかしくなり、近寄って行っても相手にしてもらえません。

それでも娘が男の子たちを追いかけまわしていたのは、女の子の友だちができなくて寂しいだけではなくて、男の子に対する興味が生まれ始めて、その気持ちを素直に見せていたのではと思えました。

男の子たちが露骨に嫌がっているのを目にして

「もう男子も女子も大人になってきて、一緒に遊ぶのが恥ずかしい年ごろだから男子にしつこく近寄ったらいけないよ」

何度も教えていたのですが全く耳を貸してくれなくて、とてもヤキモキしていた時期がありました。

 

中学生になった時も異性のことでで苦い思いをしました。

それまで小さな学校で少人数の中で過ごしていたのですが、中規模の中学校に入学すると今までにない男子の人数にテンションが上がってしまったようでした。

そういった気持ちがうまく隠せないので、周囲にもわかりやすい行動を取っていたのではと思われます。

クラスメイトがおもしろがって「好きな男子はだれなの?」とかわるがわる聞きに来たようでした。

娘も恥ずかしがることもなく「好きな男子ベスト10」を喜んで教えていて、クラスの笑いの的になってしまいました。

しまいには学校中の話題にされて、上級生の男子に呼び出されて囲まれてからかわれる始末です。

それをきっかけに、娘もやっと異性に興味があることを表に出すのは恥ずかしいことなのだと理解できて口に出さなくなったのですが、いつまでもしつこくからかわれ続けてとうとう学校に行けなくなってしまいました。

 

そういった苦い経験から今度は男子が大嫌いになってしまって、「気持ちを押さえないといけない場合がある」ことも理解するようになりました。

 

事業所の職員や相談支援専門員からのアドバイス

 

就労移行支援事業所に連絡をして、娘と一緒に話を聞いてもらえることになりました。

事業所を訪れると担当の職員と、相談支援専門員のDさんが待っていました。

 

事情を説明すると「○○くんのことだよね」とすぐにわかったので、トラブルの常連になっている人のようでした。

「彼はあなたのことが好きなんだよね、好きだと言う気持ちが我慢できなくて行動に出ちゃうんだよね」

やっぱりでした。

「でも、あなたは迷惑しているんだよね、そしたらはっきりとイヤと伝えないと」

それを言いたいけど言えないのです・・・

「口で言いづらかったら態度でしめしたらいいですよ」

 

教えてくれたのは相談支援員さんでした。

作業所の職員の方からも「迷惑しているから近づいたらいけない」ことを伝えるので、それでも近づいてきたら腕で大きく「バツ」をしてダメだと言うことを伝えたらいいと言うことです。

それでその場を離れるなり分かりやすい動作をすればいいそうです。

気持ちがうまくコントロールできないせいで、言葉で言い聞かせてもなかなか行動が抑えられないので、目に見える形で示すと効果的でこっちの気持ちもよく伝わるし、言いにくくてもジェスチャーならすぐに行動に移せるのではないか。

それでもまだ近づいてくるときは、近くにいる職員に教えたらすぐに注意しますと言うことでした。

そうやって繰り返して「いけないことだ」と伝えることでだんだん理解できるようになって来るのだそうです。

 

具体的な対処法を教えてもらって、職員も常に気を付けてくれるというのがわかって安心できたようでした。

実際に訓練に行けるようになったらすぐにその男性が接近してきて、「バツ」で対応できるようになりました。

すぐに効果がなくても、自分の気持ちをはっきりと伝えられることで、我慢することがなくなりストレスが軽減されたのでした。

 

障害者の性について

 

娘は、現在は就労移行支援を卒業していますが、同じ事業所で訓練を受けていた顔見知りの男性が、バス停で女子高生をニヤニヤしながらずっと見つめている場面に遭遇しています。

あからさまに見ているので、女子高生も気持ち悪がっているのが分かるそうです。

事業所や家族がこういった事実を知らないのなら、教えてあげるべきなのではと話しています。

娘も機会があれば事業所に教えようと思っていると言っています。

 

障害者も性に目覚めるし、性的衝動も起こります。

恥ずかしいことではないし、悪いことではないのですが、どうしても相手が出てくるのでそこに問題が起こってしまいます。

プライバシーにかかわる微妙なことなので介入しにくいのですが、放っておくと問題行動に繋がり最悪の場合犯罪にも繋がるので、野放しにするわけにはいかないのです。

欲求を発散させるために家族が苦労して手伝う話も耳にします。

知的障害のある人は理解が難しかったり、分かっていても感情のコントロールが難しかったりするので、必要なことは根気よく繰り返して教える必要があります。

「見守る」という周囲の理解も必要になってきます。

お互いが気持ちよく生活するためには、決して簡単に割り切れない問題も出てくるとは思いますが、そういった事情を理解していくのが大切なのかと思います。

 

 

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